スキャットって何?ジャズシンガーのアドリブってどうやって練習すればよいの?

ジャズシンガーと言えば、英語を使ってかっこよく歌う姿をイメージされると思います。
その中で、ジャズシンガーが歌詞じゃない言葉を使って歌っているのを聴かれたことがありませんか?
ダバダバ、ドゥイヤー…こんな風に歌っているの聴かれた事があるのではないでしょうか。
こういった歌い方のことを「スキャット(Scat)」と呼び、これはいわゆるジャズボーカリストによる「即興演奏(インプロビゼーション)」の歌唱方法です。即興演奏のことをアドリブとも呼びます。インプロビゼーション(Improvisation)はインプロとも略して呼ばれますね。
今日はこのスキャットって何?即興演奏って何?というジャズ初心者の方向けの記事です。
ジャズボーカルを始めたばかりの方。
とりあえずスキャットの基礎知識を知りたい方。
スキャットって何?という方。
即興演奏の時にジャズシンガーが独特のボキャブラリーを使いながら歌う歌唱法を「スキャット」と呼びます。
ジャズはもともと即興演奏が大部分を占めます。
ジャズの演奏家はその即興部分でいかに洗練された演奏をするかというのを日々研究し、練習を重ねます。

即興演奏をジャズシンガーが行うことを、楽器奏者の即興演奏とは区別するために、「スキャット」と呼びます。もちろん楽器奏者同様、「アドリブ」や「インプロビゼーション」と呼んでも問題ありません。
とりあえず、まずは難しいことは抜きに、ぜひ楽しみながらこの動画をご覧くださいね。英語で話していますが、字幕をオンにすると日本語でご覧いただけます。
スキャットでは独特な言語「スキャットシラブル」が使われる
ジャズシンガーが即興演奏をするときには、独特な言語を使用します。ダバダバやドゥイヤーのような言葉の使い方を「スキャットシラブル」と呼びます。
All of me – Ella Fitzgerald With Orchestra Nelson Riddle
Airegin – Lambert Hendricks and Ross
フェイクとスキャットの違いとは?(別記事:近日公開)
スキャットは自由気ままに歌っているわけではない!
ぱっと聴いただけですと、自由気ままに好き勝手に歌っているように聞こえますが、それは全くの誤解です。
ある程度、自由に歌いながらもその中には、一定のルール、例えばコード進行に沿ったメロディーラインや、演奏されているリズムスタイルに合ったフレーズ、そして、スキャットシラブルを組み合わせて演奏することを求められます。

スキャットを演奏する際に、最も重視される事は、リズムとフレージング!
ジャズシンガーたちは、スキャットシラブルを使いながら、聞いている人が心地よい「タイトなリズム」を感じられ、かつ、コード進行に合った美しい「フレーズ(メロディー)」を感じられるような演奏を目指します。
では、具体的にスキャットシラブルとは、どんなものでしょうか?
スキャットシラブルってどんなものがあるの?
先ほどもお話しした通り、ジャズシンガーが即興演奏(インプロビゼーション)をする際に、演奏する言語として使用するのが「スキャットシラブル」です。
スキャットシラブルは、一般的には下記のような言葉を組み合わせて演奏されます。
(スキャットシラブルの組み合わせ例)
- Du pa dun(ドゥパドゥン)
- Doo wee yah(ドゥウィーヤ)
- Da ba dun du ba dun(ダバドゥン ドゥバドゥン)
- Sa ba da doo wee yah(サバダドゥウィーヤ)
上記はあくまで一例ですが、こんな観点で言葉を選んでみると良いと思います。
- Da ba dun(ダバドゥン)、Dee pa doo wee ya(ディーパドゥウィーヤ):濁点、半濁点を多く使う組み合わせ。
- スウィングやボサノヴァなどのリズムスタイルに合っていて、アクセントをつけやすいシラブルの組み合わせ。
- 他の楽器、例えばトランペットやサックスなどを模倣しているように聞こえるシラブルの組み合わせやフレーズ。
- 逆に、Lalala(ラララー)のようにアクセントが付けづらく、単調な印象になってしまうような言葉はスキャットには適していません。
- Lalalaはどちらかというとスキャットよりは、シャンソンとかのイメージですね。あとは、バックグラウンドボーカルとかの場合はLalalaもいいですよね。
- スキャットっていうと「シャバダバ」ってやつでしょ?と、時々言われますが・・・うーん・・・ダサいね。笑。少なくとも私はほぼ使いません。というか、だいたいそういうこと言ってくる方、ジャズをちょっと馬鹿にしている雰囲気あるんですよね・・。個人的な経験だけかもしれないですが。(爆)
なんか難しそう・・。私には無理かも・・。

そう感じられた方も多いのではないでしょうか?
なぜ難しそうと感じてしまうかというと、たくさんの要素を一気に練習しようとするからです。初心者は習得したい要素を1つずつ分解して、個々で練習することが大事です。
ジャズ初心者の方は、スキャットの要素を1つずつ分けて練習しましょう。
初心者の方がいきなり、伴奏の音源を聴きながら瞬時に音程をとりつつ、さらにかっこいいフレーズを歌う!というのは、実際のところかなりハードルが高いと思います。
これは、たくさんの要素が一気に押し寄せてくるからです。ぱっと考えただけでも、スキャットの練習をしようと思うと、こんなたくさんの要素を一気に処理していかなくてはいけません。
- 音程
- 聴く力
- スキャットシラブルのバリエーション
- リズムスタイルに合ったフレージング
- リズム感
- 調和力(アンサンブル力)
この記事では、特に3のスキャットシラブルのバリエーションと、4のフレージングについて取り上げます。
では、掘り下げていきましょう!
スキャットシラブルのバリエーションとフレージングの練習
はい、先ほどの復習です。スキャットシラブルは、こんな組み合わせで歌われるとお話ししましたね。
(スキャットシラブルの組み合わせ例)
- Du pa dun(ドゥパドゥン)
- Doo wee yah(ドゥウィーヤ)
- Da ba dun du ba dun(ダバドゥン ドゥバドゥン)
- Sa ba da doo wee yah(サバダドゥウィーヤ)
これにいきなり音程をつけて歌うとなると、初心者には難しすぎるので、まずは音程は無視します。
スキャット初心者は、コールアンドレスポンス形式で練習するのがベスト
ジャズのフレージングやスキャットシラブルに慣れて身体に叩き込むにはコールアンドレスポンス形式で練習するのが一番です。
コールアンドレスポンスって聞いたことありますか?
コールアンドレスポンスとは、フェスなどで、アーティストが
みたいなやつです。
- コール=掛け声
- レスポンス=返事
今回はコール(講師) &レスポンス(生徒)と言う役割ですね。
ある程度慣れてきたら逆側の役割もやってみると良いと思います。
ジャズの演奏で1番たくさん演奏されるのはスウィング(Swing)のスタイルなので、スゥイングのリズムから練習するのが良いと思います。(その次にたくさん演奏されるのはボサノヴァのスタイルです。)
この動画の中(3:17〜)で、実際に私が講師役になってエクササイズをしていますので、ぜひトライしてみてください。簡単なフレーズが多いので、はじめての方でもトライしやすいと思います。
ジャズの基本は、とにかくジャズのリズムに慣れること!
ジャズ初心者の基本は、細かい理論書を読み解くのではなく、身体にジャズのリズムとフレーズを染み込ませることが第一です。
そのためには、とにかく聴くこと!聴く力をつけること!
モードやスケールなどという話もありますが、そういうのは基礎ができた後でよいです。逆に最初に学習部分から始めてしまうと、あたまの中は知識ばかりでその知識を使うための体づくりができておらず、結局使えません。
ジャズのリズム(スウィングやボサノヴァ)を頭で理解するのではなく、身体を使って理解することがなにより大切!
とにかくたくさんの音源を聴こう!おすすめのシンガーは別記事でご紹介していますので、ぜひそちらを参考にしてください。
スキャットシラブルのボキャブラリーを増やすには?
さらにスキャットシラブルのボキャブラリーを増やすためには、まずは
- 様々なアーティスト、レジェンドたちの音源を聴きまくる。
- コールアンドレスポンス形式で練習してみる。
- 教則本を買ってみる。
- セッションに行って他の楽器の人と練習してみる。 などなど
こんな流れかなと思います。
コールアンドレスポンスの相手がいない人は、教則本を買ってみる。
え?教則本はいらないって言っていなかった?
と思った方、おられますよね。はい、基本的には初心者の段階では教則本はいらないと思っています。とくに、文字ばっかりでいろいろ書いてある本ね。そういうのは絶対いらないです。
でも、先ほどの練習「コールアンドレスポンス」って自分の練習相手になる人が必要なんですよね。
そんな人いないし・・。という方もおられるのではないでしょうか?
そういう方に限り、初心者の段階でも教則本を1冊だけ買ってもいいかなと思います。ちゃんとレッスンに通って、一緒に練習できる先生がいる方は、ある程度慣れてからの購入でいいと思います。
ということで、私のおすすめのスキャット用の教則本です。
おすすめのスキャット教則本
Bob Stroffは私がBerklee College of musicに留学していた時の先生の1人です。Ritzというジャズボーカルグループの一員で日本でもレコードを出していたと言っていました。
スキャットの達人という感じで、彼のスキャットのエッセンスがギュッと詰まっているような本で、実際に私も授業で使っていましたし、今も使っています。
添付のCDでは、Bobとコールアンドレスポンスができるトラックが複数入っているので、特に初級者はそれを活用すると良いと思います。
中級以上は、トランスクライブといって、彼の演奏をそのままコピーする練習を積み重ねるとさらに効果的です。(この内容については別記事でお話ししますね。)
本当は、実際に対面で、講師と演奏のキャッチボールをしながら、コールアンドレスポンスの練習できるのが一番よいですが、こういった教則本にもCDがついているので、楽しみながら歌うことが可能です。繰り返し練習することで、少しずつジャズのエッセンスを体に取り込むことができると思います。
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